この間は来日したＪ・Ｂホーンズについて書いたが、今回は彼らと好一対の存在であるブッカー・Ｔ＆ＭＧ’Ｓに触れてみたい。

　ブッカー・Ｔ＆ＭＧ’Ｓは60年代にジェームス・ブラウンと人気を二分したＲ＆Ｂ（ソウル）の大歌手オーチス・レディングのバック・バンドとして一世を風靡した。オーチスを演奏面で支えるだけでなく、多くのヒット曲を作曲したのも彼らであった。

　リーダーのブッカー・Ｔ・ジョーンズ（キーボード奏者）にギターのスティーヴ・クロッパー、べースのドナルド・ダック・ダン、そしてドラムのアル・ジャクソンの四人編成で1960年に結成されたこのバンドは、地元メンフィスを中心に強力なインストゥルメンタル・バンドとしてＲ＆Ｂシーンを席捲し、スタックス・レコードの専属となるや、会社のスター歌手オーチス・レディング、さらにサム＆デイヴとパートナーを組むことになる。そして、彼らの合体したチームはジェームス・ブラウン＆Ｊ・Ｂホーンズの強力なライバルとして次々に大ヒットを生み出し、60年代のポップス史に輝かしい足跡を刻みこんだ。

　1967年12月にオーチスが飛行機事故で夭折してからは、スタックスも落ち目になり、ブッカー・Ｔたちは個人で仕事をすることが多くなった。スティーヴとドナルドは本業だけでなく映画「ブルース・ブラザーズ」にも出演、兄弟のバック・バンドのメンバーとして大活躍。アル・ジャクソンは惜しくも世を去ったが、ブッカー・Ｔはプロデューサーとして大成功。各々が個性を生かして活躍を続けてきたわけだが、その彼らが実に久しぶりに再会セッションを行なったのだ。

　ドラムに元パット・メセニー・グループの名手ダン・ゴットリーブを入れ、ゲストにフィル・アップチャーチ、サム・ムーア、カーラ・トーマス、エディ・フロイドを迎え、ベン・シドランがプロデュースして、"夢のセッション"はフランスのカンヌで90年１月に実現したのだが、これが実に感動的なライヴなのだ。それを収録した《バック・トゥ・スタックス・ライヴ》（ビデオ・アーツ）を見て、彼らの健在ぶりに胸が熱くなったのである。