ジャック・ディジョネットが来日し、８月５日大阪の“セレクト・ライブ・アンダー・ザ・スカイ”に出演することが決まった。この恒例の夏のイベントは1977年から始まり、毎回注目すべきグループを呼ぶことで、音楽ファンに高い評価を得てきたが、今回の目玉は何といっても、ジャック・ディジョネットのスペシャル・バンドだ。

　今回、ジャックが引き連れてくるメンバーはハービー・ハンコック、パット・メセニー、デイヴ・ホランド。全員が、現在のジャズ・シーンの中核にいる大物であり、この組み合わせほどスリリングなプロジェクトは他に無いと言える。

　先月にジャックが発表した新作《パラレル・リアリティーズ》（ＷＥＡ）がこのスペシャル・バンドとほぼ同じ編成（デイヴ・ホランドは除外）なわけだが、この新作は大物三人がクリエーティブな能力を存分に発揮してわたり合った息詰まるような力作であり、おそらく本年のベスト・アルバムに間違いなくノミネートされるものだ。

　アルバムでは、オーバー・ダビングを相当に行っているから、生の演奏はかなり違ったものになるだろうが、逆に彼らのインプロビゼーションの凄みがそれを補うから、むしろアルバム以上の緊張感が現出するだろう。ジャック・ディジョネットについては、これまでも折にふれて取り上げてきたが、単なる名ドラマーにとどまらない総合的な音楽家であり、彼が80年代に参加したアルバム及びセッションは、例外なく質の高いものだった。

　彼が率いる“スペシャル・エディション”での様々な冒険、そしてキース・ジャレット、ゲイリー・ピーコックとの“スタンダーズ”での余裕あふれる名人芸、さらにソニー・ロリンズ、レスター・ボウイ、デビット・マレイ、ミシェル・ペトルチアーニなどを強力にプッシュしたエネルギー。どれを取っても素晴らしいものであり、ジャックがいるところには必ずシリアスなジャズの核が存在したのである。

　今回の彼の公演は、いずれも音楽的スケールの大きいメンバーであるだけに、予想もつかない展開になるのではないか。