梅雨もあけ、いよいよ本格的な夏の到来だが、今年もまた全国各地でさまざまのジャズ・フェスティバルが盛大に行われる。

　代表的なものは７月末からの“ライヴ・アンダー・ザ・スカイ”と“斑尾バドワイザー・ニューポート・ジャズ・フェスティバル”、そして８月末に控える“マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル”といったあたりだが、それらは既に十分パブリシティーが行きわたっているだろうから、今回は新顔のフェスティバルを一つ紹介してみよう。

　私が取り上げるのは、７月28、29日に山形県蔵王温泉で行われる“蔵王ジャズ・フェスティバル’90”である。今年が一回目で、これから毎年恒例のイベントにしていきたいと地元主催者側は考えているようだが、参加メンバーがユニークなのでポピュラリティーをどれだけ得るかは分からない。同じリゾート地で行うマウント・フジや斑尾を目標にしているのだろうが、あまりにも小規模でマイナー好みのメンバー揃いだ。まあ、逆に言えば高原の温泉地で本格派のジャズをじっくりと味わいたいという向きには願ってもない顔ぶれである。

　参加グループは六つだが、主な名前を挙げるとルー・ドナルドソン、スタンリー・カウエル、ダラー・ブランド、エバン・パーカー、ミシェル・サダビイ、アンリ菅野＆ジャパン・オールスターズといったところだ。

　バード直系のアルト奏者ルー・ドナルドソン（1954年にアート・ブレイキー、クリフォード・ブラウンと共演した《バードランドの夜》はあまりにも有名）の久々の来日も楽しみだが、ルー以外のダラー・ブランド、エバン・パーカー、スタンリー・カウエルなどは60年代から前衛的な演奏活動で知られ、マイナーながらも常にクリエーティブな姿勢で高く評価されている。

　バップの古豪ルーと前衛派のダラーやエバンなどが一緒する（ジャム・セッションもあるらしい）のは想像するだけでも楽しく、マイナーなフェスティバルならではの快挙であり、私はそういうハチャメチャさを楽しみに蔵王へ行ってくるつもりだ。