LIVE UNDER THE SKY '83

　ECM DIVISION

LIVE UNDER THE SKY '83 多田雅範
	あつくてたまらないいちにちだった。不快指数100％で、もしかしたらライブ・アンダー・ザ・フカイではないかとチケットを見なおした。
	パット・メセニー・ファン・クラブ会長の毛利さんが来てるというので、19日の ECM DAY でかりたライル・メイズの新曲（メセニー・グループのコンサートライブでやった "MARS"）入りテープをかえすに、来年にきっとライル・メイズのソロが出るそうで、おおよろこびして席にもどった。
	ぼくの買った席はおそろしく右側でとてもチックのゆびが見えそうにない。それで席をはなれて会場をうろついていると、12コぐらいずらっと空いている席があったので、そこの人が来るまですわっていることにした。今思うにそこは関係者のための席だったのでは……前に座った家族連れに話しかけているのは、まちがいなく、スイング・ジャーナルの児玉さんであったし、となりにすわっていた外人の女性の胸にはＮＨＫとあったし。とにかく良い席だった。
	コンサートが始まった。ぼくはこのトリオが演るというので、「トリオ・ミュージック」と「ナウ・ヒー・シングズ、ヒー・ソブス」を買っていたので、これまたコンサートで聴くと感激ものだった。「わーチック・コリアのゆびがうごいている！」レコードとおんなじ音を出すんだなぁ。みんな笑いながら演ってるなぁ。ヴィトウスでかいなあ。チックちいさいなぁ。
	（中略）
	ロリンズのカルテット、ぼくは、ロリンズがまた倒れて代わりにライル・メイズを入れてメセニー・グループにしちゃえばいいなぁと、ぼくはロリンズの良さを解らなかったのだ。ロリンズが吹き出したとたん、吹っとんでしまった。ロリンズが陽気なフレーズを空いっぱいに吹きとばす。ベースがベンベンと強じんな音をはじく。デジョネットは15分ものドラム・ソロでパットとロリンズは呆然とのぞきこむ。パットはお得意のギター・シンセのサウンド、お得意の“内また悩ましげ表情”のスタイル（女々しいー）。ロリンズの60秒ブロー、すごい！となりの女のひとと、わけのわからない英語で「すごいすごい」とさわぐ。通路ですっぱだかの幼児がおどって、ふくしクンが抱きあげて太陽にかざすとまわりの客席がなごんだ。
	アンコールでは「モリタート」がかかって、前へ出ていったぼくたちはおこられてしまった。みんな立ち上がって踊ればいいのに。さいごにとなりの外人の女の人は、ぼくたちに「Hey ! You are nice guys !」。AEOCのナイス・ガイみたいでとても気分がよかったのである。
	多田雅範 Masanori Tada
	※本稿は、ECM DIVISION（ＥＣＭファンクラブ）の会報『every clue message』創刊号［1983年11月1日発行／編集人：大久保福祉／発行人：多田雅範］に掲載された原稿の復刻です。（musicircus）

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