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ECM review

Album cover reproduced by courtesy of ECM Records, Munich
●ジャケット写真はECM Recordsの許諾のもと、掲載しております。（musicircus）
Mark Isham
Art Lande
We Begin

Mark Isham fluegelhorn, trumpets, synthesizer, percussion
Art Lande piano, synthesizer, percussion

ECM 1338
The Melancholy Of Departure
Ceremony In Starlight
We Begin
Lord Ananea
Surface And Symbol
Sweet Circle
Fanfare

 Digital Recording, January 1987 at Rainbow Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Cover Photo: Christian Vogt
Cover Design: Dieter Rehm
Produced by Manfred Eicher

ECM 1338
国内盤ＣＤ廃盤
　
　 　ECM から２枚のアルバムを出して解散したグループ "ルビサ・パトロール Rubisa Patrol" は、硬質な響きのイメージを幻想的な気配で包む絶妙な平衡感覚を特徴としていた。そのメンバー四人の内の二人、アート・ランディとマーク・アイシャムによる、これはグループ第３作と言ってもよい比類なき旋律美と詩心に溢れたアルバムだ。全編がクリスタルの眩い輝きに満ちている。 　
　 　リズム・マシンとホーン・ループによる解像度の高いサウンドをバックに、トランペットが彼方に望む山々の稜線をなぞるようなロング・トーンを奏でる。片やピアノは大地や気象と交感するかのごとき抽象的響きをブロック状に配していく。肌寒い空間を曙光が明るく照らし出すときのすがすがしい冷気を包んだ暖かさ。やがて響きは暗い宇宙へと溶け込んで和らぎ、結晶化した幻想的ヴィジョンが残照のように残って終わる。 　
　 　以前、豊田市美術館に若林奮展を日帰りで見に行った際、鞄のなかにこのＣＤだけを入れて家を出た。新幹線の車内で、音楽は彫刻のように空間を拡げ、世界への感覚を研ぎ澄まさせた。若林奮の彫刻を、堆積したデッサンが立体化したものと看做すことができるのと同じ意味で、本作《WE BEGIN》も、響きの破片の連続で生み出された「多層化した音響体」として成立しているように思う。 　
　

堀内宏公
Hiromasa Horiuchi

 　

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