PTA推薦（!?）ジャズ　"Baby Loves Jazz"を愉しむ作法

米国には、1990年に創設されて以来、
毎年優れた子ども向けグッズに授与される賞があります。

NAPPA（National Parenting Publications Awards）、
日本風にいえば、日本PTA全国協議会選定による
保護者推薦ギフト大賞、といった雰囲気でしょうか。

受賞対象カテゴリーには、
本、おもちゃ、ビデオ、ゲーム、ソフトウェアなどがあり、
それぞれに「金賞（NAPPA GOLDS）」と
「優秀賞（NAPPA HONORS）」が設定されています。

かなり多くの製品に授与されるだけでなく、
クリスマス商戦が盛んになる、売り手にとっても親御さんにとっても
いいタイミングに発表されるあたり、
消費大国らしい粋なはからいといえます。

2007年のカテゴリー別受賞製品一覧は、ここから見ることができます。■

このアワードの音楽部門にて、
今年金賞を受賞したＣＤのうちのひとつが、
この「Baby Loves Jazz: Greatest Hits Volumes 1 & 2」です。

大人にとっても難解な印象があるジャズを、
ちびっ子向けにどう工夫しているのでしょうか。

というわけで、Webサイトをのぞいてみました。■

本アルバムに参加している「Baby Loves Jazz band」は、
セプテット構成です。

メンバーの動物たちには、ジャズ史上に名立たる
大物ジャズプレイヤーをもじった名前が付けられ、
詳細なプロフィールが設定されています。

たとえば、フクロウさんの名前は、「Charlie Bird」。

Charlie "Bird" Parker にちなんでおばあさんにより命名され、
ママのすすめでサックスを始めた…などという具合です。

何と芸の細かい！

NAPPAのウェブサイト上では、
「子守唄（Lullaby）」として推薦されている本アルバムですが、
試聴をしてみるとテンションも高く、
むしろ子どもは興奮して眠れなくなりそうです。

また、各キャラクターの声によるナレーションが
随所に入っていたり、収録曲の歌詞も
子どもを意識した楽しい内容になっており、
子どもの心を捉える仕掛けが随所に見られます。

子どもだけではありません。

ちょっとジャズ好きな大人なら、実際に演奏している
メンバーの名前を見て心をわしづかみにされるはずです。

アヒルさんも、ネズミさんも、そしてキリンさんだって、
みんな実力派ジャズプレイヤーなのですから。

このメンバーが、本アルバムに収録されたオリジナルソングの
作曲もしているというのですから、その贅沢度合いは推して知るべし。

もちろん、確かな演奏技術により、
大人も十分楽しめるアルバムになっています。

子どもに本物のジャズの魅力を聴かせるこの企画ですが、
子どもと一緒に愉しむだけじゃ、もったいない！

ＣＤを通じてお近付きになった、
参加ジャズプレイヤーの通常の活動に触れることもお忘れなく。

私のオススメは、ネズミさんこと Omer Avital のリーダーアルバム
"The Ancient Art of Giving"。　■

キリンさんこと Ali Jackson や
アヒルさんこと Aaron Goldberg も参加していて、
魅力的な演奏を聞かせてくれます。


	Espèces d'espaces Aska Nagai	さまざまな空間長井明日香