パリのジャズクラブ "Sunset" でマヌーシュジャズを

ジャズが好きになってからというもの、パリに行くと必ず立ち寄る場所があります。

それは、ジャズクラブが数軒店を構えるロンバール通りに、
フリージャズ界で活躍するクラリネット・サックス奏者、
ミッシェル・ポルタル（Michel Portal）氏がそのご兄弟と創設したジャズクラブ
「サンセット＝サンサイドジャズクラブ（Sunset-Sunside Jazz-Club）*」です。

「サンサイド」は地上１Ｆに、そして「サンセット」は同じ建物の地下１Ｆにあります。

* フランス語の規則に従って読むと「Sunside」は「サンシード」という読み方になりそうなものですが、
　フランスのジャズ関係者が「サンサイド」と呼んでいるため、素直に英語読みします。

概ねいつも満席なので、予約は必須です。

そこで、パリに滞在するときはネットで出演者情報をざっと確認して、
行きたいライブがあれば、事前にネットで予約を完了させておきます。

そんなわけで、気が付くと私のもとにはそれぞれのジャズクラブから
週に１回の頻度で、交互にメールマガジンが届きます。

設立以来、きちんとプログラムディレクターを立てた上で、
出演者交渉やプログラム編成に大変気を配っているジャズクラブとあって、
イベントも盛りだくさん。

新人ジャズアーティスト発掘イベントをはじめ、
“ボーカルジャス” “ピアノジャズ”といった具合にテーマ設定した上で、
そのテーマに見合ったミュージシャンに演奏してもらったり、
あるビッグアーティストにオマージュを捧げるイベントを開催し、
そのアーティストと縁が深いアーティストに出演をしてもらったりと、
魅力的なイベントを数多く実施しています。

とくに、夏場に開催している "American Jazz Festival" は、
今年で18回目を数えるほど続いているイベントで、
毎年有名なジャズミュージシャンが米国からやってきて
大盛況だったりするのです。

そんなイベントの開催内容をネットで眺めては、
パリ行きに思いを馳せている私です。

さて、そんな、「刺激的」なメールマガジンが、
また私の「パリ行きたい欲求」を刺激してくれました。

10月16日から27日まで行われていた、
"Les manoucheries du Sunset" というのが刺激のもととなったイベントです。

Manouche（マヌーシュ）とは、フランス北西部に住む、
いわゆるジプシーの総称であり、
彼らが奏でるギターを中心とした弦楽器で演奏するジャズを
マヌーシュ・ジャズ／マヌーシュ・スウィングと呼んでいます。

この音楽の祖といわれるギタリスト、
Django Reinhardt（ジャンゴ・ラインハルト）の生誕百年祭を
来年に控えていることを踏まえて、
新たにこのイベントを立ち上げたようです。

しかも、同時期に行われていた、
CareFusion というヘルスケア企業が世界中で行っているジャズフェスティバル、
「ケアフュージョンジャズフェスティバルパリ」のプログラムとしても
入り込んでいるのだから、
これはサンサイド・サンセット経営者の手腕なのでしょうか。

■　CareFusion Jazz Festival WW

■　CareFusion Jazz Festival Paris

今回のイベントは、ジャンゴの精神を受けつぐ
新世代ミュージシャンによって構成されており、
ジャンゴのお孫さんにあたる David Reinhardt のコンサートを皮切りに、
Ninine Garcia, Lemmy Constantine, Samy Daussat, Costel Nitescu, Sylvain Luc
などといったフランス在住マヌーシュ系ギタリストたちが、毎晩出演していたようです。

先日コンサートのため来日していた Angelo Debarre の名前もあります。

来年は、ジャンゴ・ラインハルト生誕百周年ですから、
この種のジャンルの音楽にますます注目が集まるでしょう。

何よりうれしいのは、
今回「第一回」ということで実施された "Les Manoucheries du Sunset" は、
確実に来年以降も継続的に行われるだろう、ということです。

こういった類の音楽が好きな輩（まあ、私のことですが）には幸せすぎるイベント。

絶対にいつか行ってみたいので、
恒例イベントとして定着することを祈りたいと思います。

■　www.sunset-sunside.com


	Espèces d'espaces Aska Nagai	さまざまな空間長井明日香