"A l'Ombre d'un Nuage（ひとひらの雲の陰で）"

マヌーシュ・スウィングの発展を別の視点で見つめる映像ライブイベント
“A l'Ombre d'un Nuage（ひとひらの雲の陰で）”

November 20, 2010

マヌーシュ・スウィングの立役者といえば、やはりジャンゴ・ラインハルト（Django Reinhardt）でしょう。今年生誕100周年を迎えたこともあり、パリには新たに市公認の“ジャンゴ・ラインハルト広場（Place Django Reinhardt）”が完成し、ベルギーではジャンゴ生誕100周年記念の銀貨が発行され、このジャンルを支える有名ミュージシャンは続々とオマージュを捧げるCDを発売したり、コラボレーションをしたり、ジャンゴ作品を集めたコンピレーションアルバムが続々発売されたり、ジャンゴに関するドキュメンタリー映画やドラマが放映されたり…と、ジャンゴをめぐって本当に賑やかな年でした。

「でも、ジャンゴの陰で活躍し、このジャンルの発展を支えたジタン（ジプシー）だっていたんだ！」ということで企画されたのが、“A l'Ombre d'un Nuage（ア・ロンブル・ダン・ヌアージュ）”という、映像ライブイベントです。敢えて訳せば、「ひとひらの雲の陰で」という感じでしょうか。代表曲に「雲（Nuages）」を持つジャンゴをひとひらの雲になぞらえて、1930年代にジャンゴの陰で活躍したあるミュージシャンに焦点をあてたイベントです。

そのミュージシャンとは、馬商人として生計を立てるためにスペインからフランスに渡ったジタン（ジプシー）一族をルーツとする、フェレット３兄弟、Baro Ferret, Sarane Ferret, Matelot Ferret（バロ・フェレット、サラーヌ・フェレット、マテロ・フェレット）です。彼らの流れを汲むミュージシャンといえば、現在活躍中のブールー・フェレとエリオ・フェレ（Boulou et Elios Ferré）の兄弟がいます。彼らはすっかり苗字をフランス風に改変していますが、当時の一族は「フェレット」という具合に“t”をきちんと発音していたといいます。

本イベントでは、まず Julien Gueret（ジュリアン・ゲレ）と Olivier Naudin（オリヴィエ・ノダン）両監督による映画が上映されます。その内容は、今年7月に亡くなったベルギー出身のギタリストで、当時のフェレット兄弟をよく知る Francis-Alfred Moerman（フランシス-アルフレッド・モエルマン）をはじめ、時代を共にしたミュージシャンへのインタビューと、当時の映像により、ジプシー・ジャズ（Jazz Gitane）とフェレット兄弟の歴史を紹介しています。そして、映画上映会の後は、監督の Julien Gueret（ジュリアン・ゲレ）がギターを担当しての、ライブが行われます。1930年代の音楽を再現しつつ、その内容はバンドの編成によって、ワルツだったりジプシー・ジャズだったりミュゼットだったりするそう。

ライブもさることながら、モエルマンの映像は、今や貴重な資料となりました。日本でこのイベントを観られることは期待していませんが、すでに2011年のイベント実施予定もあるようですので、機会があればフランスで観てみたいと思います。

◆オフィシャルサイト“A l'Ombre d'un Nuage” ■

◆映画“A l'Ombre d'un Nuage”紹介動画 ■

◆コンサート試聴 ■


	Espèces d'espaces Aska Nagai	さまざまな空間長井明日香