「あれ？」

リビングから明かりが漏れてる。

あっれー？もしかしてもぉ朝ぁ？でも外明るくないじゃんねぇとひとり寝とぼけていると電話に答えるフランソワの声。

「はい？　ええ。いいえ。間違い電話ですよ、ムッシュー？」

そして電話を切る音。

寝室から「ねー、どーしたのぉ？」と声を掛けると戻ってきてベッドにもぐりこんだフランソワが

「うん。頭痛くて薬飲んでた。あ、今の電話？ああ、間違い電話だった。それもそいつ俺に“ふざけないで早くジャン・ピエールを出せ。私はドイツから電話してる”っつーのよ。夜中の２時だっつーの（笑）」

「ふーん」

返事にもなんない返事をしながら眠たかったアタシはもっかい目をつぶった。

多分３０分くらいは寝てたと思う。

タラタラッタラァ♪タラタララ〜ラン♪

あ“−。

ちなみに寝ることが３度のゴハンよりも好きでいつでもどこでもすぐに安眠状態突入オッケーなアタシは、例え夜中に急に雨がめちゃ降ってきてカーテンを濡らしてようが外の交差点でドッカーンと事故ったようなデッカイ音がしようが間違っても慌てて起き上がったり はしない（笑）

つーかこの街では突然真夜中の３時に自己紹介つきで道端でトランペットを吹き出す人がいたり、下のカフェから出てきたカップルがいきなり怒鳴り合いの喧嘩を始めて「オスクゥ〜（助けて〜）」とカナキリ声で女が叫び出したりなんだりかなりスリリングな日常音に囲まれて生活しちゃってるもんで電話の音くらいじゃあビクともできない現状である。

つーわけでまぁそんな「急なアクシデント☆その他モロモロ」に対応するのは
我が家ではフランソワと相場が決まっておりまする。

ムカツキながらも律儀に起きて電話に出るフランソワ。

「だからムッシュー。さっきも言ったようにジャン・ピエールはここにはいませんってば！いやだからけしてふざけてるわけじゃなくて間違い電話なんですよ！」

電話の相手のおじさんってばどーしてもここにジャン・ピエールがいると思い込みたいらしい（笑）

ベッドに戻ったフランソワはうんざりした様子で再び布団にもぐりこんだ。

したら。

タラタラッタラ〜（もういいから・笑）

はいはい。起きあがったフランソワ君。

リビングの電話を掴むと一呼吸置いて。

「どうして電話を切ったんだって言われても、もうさっきから３度も繰り返してるんですがジャン・ピエールなんて人はココにはいないんですよ！アナタがドイツから電話してようが例え北極から電話してきてようが僕にはまるっきり関係ないんです。いいですか？もう一度言いますが確実に間違い電話です。それに夜中の２時なんです。いい加減にしてください！」 と言って電話を切った。

そして彼は今日も健気に朝５時に起きて仕事場へと向かったのだった。

がんばろうね〜。モン・プチ・カナール♪


メ

2003年9月4日木曜日（A Paris, Jeudi, 4, SEPTEMBRE, 2003）