チャリン。

ウチの玄関のブザーが鳴った。

アパートのエントランスに人が来てる時の音は

ブーッブーッブーっていう、イキナリに弱いアタシなんて飛び上がっちゃうくらいにかなり心臓に悪い音だったりするので、こっちの可愛いチャリン音がした時はウチの玄関のドアの前に人が来てる合図。

深い眠りの底に沈みきっていたアタシはヒッと息を引きつらせて目を開いた。

真っ暗。

寝たのが１１時半頃だからどう考えても夜中の２時過ぎ。

まさに丑三つ時である。

御多分にもれず我が家の☆急なアクシデントモロモロ☆対応員のフランソワがむっくりと起きて玄関へ。

ドアの鍵に手を掛ける音。

「ぁ。ダメ。覗き穴から廊下を覗いたりしちゃ。いきなりズドンと撃たれるとか電動穴あけ機とかで ぐい〜んってヤラレルかもしんないしっ！」

寝る前に観たサスペンス・ホラー映画の場面が頭をよぎる（ってアタシもかなりヤラレてるかも・笑）

女性の声が何か言ってるのを布団の中で聞く。

あ〜マダム・C。

マダム・Ｃは不動産屋にお勤めの推定40ん歳。ウチの下の階に住んでいる。  

旦那様は盆栽が趣味の中国人である。

高校生くらいと小学校高学年くらいに見える子供あり。

アタシ達が引っ越して来た日、自分ちの玄関ドアを開けて濡れた髪＆バスローブ姿でスーパーの配達人を待っていた人。

フランソワに小声で「うちもアジア人とのカップルなのよぉ」と色っぽい目配せをした女性である（笑）

布団の中でなんかワカンナイながら耳をダンボにしていると

「天井から水漏れしてるのよぉ。お宅なんか問題ないかしらぁ？」

確かにぐっすり寝てる時に

天井からポタ。。。。ポタ。。。。と何かが落ちて

きたら怖い。

ホラーだ。

アタシよりも寝起きが悪いフランソワは「あ？」「う？」「え？」みたいな返事ともつかない返事をしながらウチの水周りをチェックする。

台所もバスルームも別に水が溢れ出してる様子はない（つーか床が水浸しだったらいっくらなんでもアタシ達も気付くってなもんで）

「そう。ホントにごめんなさいね〜。実はかれこれ

一週間くらい前からなのよね〜。ウチの息子たちの部屋の天井剥がれだしちゃって」

へ？

アンタそれなのにこんな非常識な時間選んでわざわざバスローブ姿でそれ言いに来たんかい？

  ・・・・・・・。

早く引越ししたいと切実に願う春の夜明けである。

2004年2月20日金曜日（A Paris, Vendredi, 20, FEVRIER, 2004）