May 21, 2008

　2006年以降、ライプツィヒ Leipzig でヴァイオリンの教授職を務めているカロリン・ヴィトマン［カロリン・ヴィットマン］ Carolin Widmann は、ロマン派のヴァイオリン曲のレパートリーと現代作品とを結び付けることを主なテーマとして試行錯誤を重ねています。

　今回のワークショップでは、聴衆とのコミュニケーションの問題に応えるために、テーマを現代音楽の表現方法ならびに現代音楽が意味するものに焦点を絞ります。今回のフェスティヴァルに出演するソロとアンサンブルを問わない全弦楽器奏者がこのワークショップに招かれ、参加します。

（6月13日、午後2時から4時）

　ガース・ノックス Garth Knox は、アンサンブル・アンテルコンタンポラン Ensemble Intercontemporain やアルディッティ・クァルテット Arditti Quartet の一員として、現代作品に取り組むヴィオラ奏者の中でも傑出した評価を集めていますが、彼はこの数年、ヴィオラ・ダモーレ viola d’amore に特別な関心を寄せています。ノックスの手の中で、このほとんど忘れられたバロック時代の楽器に新しい生命が与えられ、1600年から現代までのさまざまな時代の音楽を奏でる試みが熱心に続けられています。

　今回のワークショップでは、まず現代の主要なヴィオラ作品について概要を述べた後（リゲティ Ligeti、ベリオ Berio、クセナキス Xenakis、シャリーノ Sciarrino、クルターグ Kurtág、等々）、実際にデモンステレーションの演奏を行ない、次いで、数種類の現代奏法に関してディスカッションを行なう予定です。また、ヴィオラ・ダモーレの歴史的な過去のレパートリーの紹介や、ニュー・ミュージックにおけるこの楽器の可能性について等、話の広がりが期待されます。

（6月14日、午後12時から2時）

　スウェーデン出身のソプラノ歌手アンナ・マリア・フリーマン Anna Maria Friman は、ヨーロッパや米国で過去に何年間も歌手、声楽アンサンブル、合唱団を対象としたマスタークラスやワークショップを実施してきた実績があります。

　今回のワークショップは、アンサンブル歌唱のさらなる探究や理念の転換を求めている個人の歌手や、あるいは既に活動中の声楽アンサンブルを対象としたものです。要点となるのは、演奏時における聴衆との間でのコミュニケーションはもちろん、アンサンブル（グループ）の歌手同士の間で発生するコミュニケーションの問題です。参加者は、どの音楽ジャンルの作品でもよいので必ず数曲のレパートリーを準備してくること。

（6月15日、午後12時から2時）

　サヴィナ・ヤナトゥー Savina Yannatou が歩んできた音楽の歴史は、ルネッサンスの音楽から現代作曲家マノス・ハジダキス Manos Hadjidakis とのコラボレーションにまで至る、極めて幅広い基盤をカヴァーしています。1990年代初頭に、彼女はフリー・インプロヴィゼーションによる歌唱の実験を始めました。また1993年からは、テッサロニキ Thessaloniki を拠点とする音楽家集団プリマヴェーラ・エン・サロニコ Primavera en Salonico と共に演奏活動を始め、今も継続中です。サヴィナ・ヤナトゥーは、他に、舞台、ヴィデオ・アート、ダンスのための音楽も制作しています。

　今回の彼女のワークショップでは、声楽のインプロヴィゼーションに焦点を当てます。声による更に自在な表現領域を求める人にとっては、どんなレヴェルの人であれ最適な講座となることでしょう。このワークショップでは、声楽技術よりも、音楽を愛する心のほうが重要なポイントとなります。

（6月13日と14日、午後2時から4時）

　ニーチェ Nietzsche の著書『悲劇の誕生 Geburt der Tragödie』を通じて、わたしたちはギリシア演劇の中で合唱［コロス］がいかに重要な役割を果たしているかについて知っています。しかしその実際の歌唱方法となると、ほとんど知られていないのが実情ではないでしょうか。コスタス・ヴォムヴォロス Kostas Vomvolos は、プリマヴェーラ・エン・サロニコ Primavera en Salonico の創立メンバーの一人であると同時に、古代ギリシア劇の復元上演の専門家として高く評価されている音楽家です。

　コスタスのワークショップは、音楽家のためだけでなく、ダンサー、俳優、パフォーマー、研究者、その他この分野に興味を抱いているさまざまな人を対象としています。ギリシア古典劇への種々のリズム面ならびに旋律面の観点からのアプローチが試みられる予定です。また、このワークショップでは、始めは単純なモチーフを使って集団即興演奏を行ない、それがやがて次第に複雑な構造へと発展していく創造的なプロセスを実践します。

（6月13日と14日、午後12時から2時）

　ベース奏者のビョルン・マイヤー［メイエル］ Björn Meyer は、長年に亙って彼自身が「トリップフォーク Tripfolk」と名付けている音楽作りを行なっています。そこでは、世界各地の多様な音楽的伝統および環境が、作曲と即興の手段として、新しい音楽を創造するために結合されています。彼のワークショップでは、世界各地の民謡の伝統を、現代的なインプロヴィゼーションと作曲のためのインスピレーション（霊感）源として取り上げます。

　第一部では、民謡のリズム構造、スケール（音階）の使用法、そして各楽器の編曲手法と演奏技術に焦点を当てます。続いて第二部では、民謡の構造について判明した各種の知識を応用して、実際の作曲と即興に反映させ、音楽的な統合を行なうことを試みます。このワークショップは、あらゆる楽器の演奏家を対象としています。

（6月15日、午前11時から午後1時）

　ニック・ベルチュ Nik Bärtsch が標榜する「リチュアル・グルーヴ・ミュージック（儀礼的グルーヴ・ミュージック） Ritual Groove Music」は、ジャズ、ミニマル・ミュージック、ファンクばかりでなく、東洋哲学からも大きな影響を受けています。ベルチュは、この音楽について、以下のように語っています。

　──「これらの音楽は、構造化された空間、ならびに反復と縮減という理念、複数の組み合わされたリズムなどへの偏愛によって組織されています。強迫観念的な複数のトルク torques ［回転モーメント］や、異なった拍子を層状に重ねて微小な相互作用を発生させることで、音楽は、つねに状態を変化させ続けることになります。」

　ニック・ベルチュのワークショップではこうしたグルーヴを生み出すミクロな構造とフレーズの作り方について述べられる予定です。またこうした音楽における個々の音楽家とアンサンブル全体との関係について、集団演奏という観点を踏まえた地点からも考察されるはずです。参加者自身が作曲した作品の持ち込みは歓迎します。あらゆる楽器の演奏者が受講対象です。

（6月14日、午後2時から4時）

(c) ECM Records, Munich. Used by permission.